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建築家・飯沼竹一のブログです。暮らしや住まい、家や建築、街などを通して見聞きしたこと、日々感じたこと、考えたことなどを気儘に手記にしています。四方山話も含めて呑気に続けて行こうと思います。 ご意見ご感想などお願いします。
超高層マンションから景観を考える
宇治の平等院鳳凰堂は言わずと知れた国宝であり、「古都京都の文化財」の一つでもある世界遺産である。
私も遙か昔(苦笑)…建築を志す前に2度の修学旅行で京都を訪れたが、
この鳳凰堂の美しさは、他の寺社仏閣から抜きに出て強く印象に残している。

この鳳凰堂は東を向き、阿字池の対岸からみる姿が一番美しいし、切手やガイドブックなどに表されているのもこの構図であり、1000年の悠久の時を刻んできた世界に誇れる景観でる。ところが、先日の読売新聞にはこの方向から見る鳳凰堂の背面に民間の高層マンションが見えるというなんとも情けない記事が載っていた。
もちろん景観論争のことであるが、これは10年ほど前に平等院の裏手に15階建てのマンションが建ち、鳳凰堂の背景に入ってしまい創建当初からの風致が大きく損なわれたため、景観保全の論議を呼んだものである。
それだけに昨年からの京都市の景観規制は遅きに逸した感があるもの、大きく評価したいと思う。

景観の話をするとまたもや景観先進国であるヨーロッパとの比較になるが、これはもはや行政の不作為だけではない。
多くの日本人が、文化や歴史を大切にし、後生に伝えるという意識が欠落しているのであろう。
そして需要があれば、社会的な正義やモラルも無視する利益最優先のデベロッパーと、そこに集う建設関係者。さらに一番問題なのは、売っているものを自分の金を出して買うのが何故悪い?買った者の権利、所有者個人の財産である…と言った回りに対する気遣いなど無関心な風潮。
国立のマンション訴訟でも係争中でも売れてしまう現実…そこには社会的なモラルなど無い。手前勝手な事実だけである。



一年前までは快晴の朝夕に、5階にある私どもの事務所からも富士山と海が望めたのだが…


近年、私どもの事務所のある千葉港のエリアでも、住民エゴのむき出しの争議を度々目にする。
1995年以降の時期からこのエリアで建設された高層マンションは、海や富士山が見える眺望の良さを売りに販売された。 ところが、この湾岸地区の用地活用に時代の変化が押し寄せ、海岸寄りに次々にと新たにマンションが建設されているのである。これまで眺望を自慢していたマンション住民にとって、目の前に視界を遮る新しいマンション出現は承伏できないようであり、「景観を損なうな!」とか「眺望を奪うな!」とかの自分本位な要望をデベロッパーにぶつけるのである。

さて、千葉市の中心部でも42階建ての初の超高層マンションが着工した。周辺住民やこの地域に毎日通う人々にとって、これまで見えていた景色はどのくらい削られるのだろうか? せめて、この新たに誕生する建築物が多くの人にとって受け入られるデザインであって欲しいと願う。
大規模な構造物や超高層ビルは膨大な人々に長い間見られ続けるのであるから…美しくない巨大なものを見続ける日常は勘弁して欲しいと思う。
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コメント
この記事へのコメント
京葉道路拡幅
景観問題とはちょっと違いますが・・・
京葉道路拡幅は昭和20年代に計画され、いよいよ着手されようとしています。両国地区国道14号北側の8mが削られてしまいます。私は該当の地に住んでいましたが、拡幅されると殆ど土地が無くなってしまうので、バブル最盛期にさっさと売っぱらってしまいました。あれから20余年、今、地元の商店主達は真っ青になっています。どうあがいても国が相手ですから・・・
2007/06/19(火) 16:42:48 | URL | オルガン探検家 #-[ 編集]
チャリンコ道にして!
オルガン探検家さま

コメント有り難うございます。

R14号の拡幅工事始まるのですか?
でも都内には、もう車がぶっ飛ばす道路は要らないでしょう!チャリ道や歩道を整備して欲しいですな!

それにしても、貴殿の先見の明に肖りたいと思います。(^^)
2007/06/19(火) 22:18:33 | URL | takezo! #-[ 編集]
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古都京都の文化財 古都京都の文化財(こときょうとのぶんかざい)は、京都府京都市・宇治市、滋賀県大津市に存在する寺院等の総称。1994年にユネスコの世界遺産(文化遺産)として登録された。.wikilis{font-size:10px;color:#666666;}Quotation:Wikipedia
2007/07/27(金) 13:57:54 | 観光地に行ってみて