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建築家・飯沼竹一のブログです。暮らしや住まい、家や建築、街などを通して見聞きしたこと、日々感じたこと、考えたことなどを気儘に手記にしています。四方山話も含めて呑気に続けて行こうと思います。 ご意見ご感想などお願いします。
森林からの贈りもの
先だって参加した土佐材視察ツアーで、ヒノキの集成材をつくる工場も見学しました。
この工場では地域で育てられる四万十ひのきの間伐材を利用して集成材をつくっています。
間伐材は植林が成長する過程で密集化する立木を間引く過程で発生する木材ですから、資源の有効利用になります。
そして合板などにプリントしたものなどとは違って、本物の木肌がそのまま現れます。

贈り物

この工場では集成材を製造するだけでなく、家具や玩具などの製品開発もしています。
ヒノキの香りがし、木の温もりが感じられる製品が作られていました。

そこで見かけた児童用の椅子。
近隣の小学校に納品しているとのことでした。
新入生一人一人に市町村から入学祝いに送られる。
小学生はこの自分の椅子を6年間使い、この椅子を持って卒業するそうです。
じんわり胸に染みた素敵な話でした。

大正町森林組合

http://www.shimantohinoki.or.jp/index.html
http://www.hinokikagu.com/



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千葉、東京で住宅設計を行う建築設計事務所

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土佐材の魅力
少し前に、高知県産材の視察ツアーに参加しました。
リビングセンターOZONEの紹介で、JIA(日本建築家協会)関東甲信越支部住宅部会の主催です。
高知県木材協会や高知県木材産業課などのご協力を得て、高知県森林技術センター、プレカット工場、梼原町森林組合などを2泊3日で見学しました。

このツアーに参加する前に、新宿パークタワーのアトリウムで「TOSAZAI展」が開催されていて、所用ついでに30分ほど見学しました。アトリウム内での軸組だけとはいえ2棟の原寸展示に、いいものをつくっているなとの感想。現地の視察が更に楽しみになりました。

土佐材
土佐材
土佐材はこれまで、あまり首都圏には出荷されてこなかったと聞きます。
それは、木材市場が近畿圏だけでもどうにか間に合っていたからだろうと思います。
ところが、近年ますます林業、木材市場が衰退し、山間部は人口が減少。さらに森林が荒れる状況に待ったなしのところではないかと想像します。

そんな状況下、檮原(ゆすはら)村という山間の辺鄙な村(ご免なさい!苦笑)が、とても先鋭的で個性的な発信をはじめて注目が集まりました。
発電用風車を設置して売電して、得た資金を使い町内の公共施設に太陽光発電パネルや小型水力発電機を設置。森林組合では間伐材を利用してペレットを製造し、町民にペレットストーブの購入などに補助をしています。
隈研吾さん設計のホテルや町役場などもその発信の一つでしょう。
2009年には環境モデル都市に選定され、将来的にはエネルギーの地産地消によるエネルギー自給率100パーセントを目指しています。
http://www.town.yusuhara.kochi.jp/

今回の「TOSAZAI展」やこのツアーの取り組みはそう言った危機感から、官民併せた企画なのでしょう。
つまり、自分たちから発信して売り込まないと待っていては何も生まれない。これまで材料の品質を高め、流通体制も整えてきたけどそれだけじゃ駄目で、自分たちが土佐材の良さを知ってもらい首都圏にも販売していこう、という発想、目的なのだと思います。

土佐材
土佐材
土佐材

さて、土佐材の魅力です。
高知は古くから土佐ヒノキの産地として知られていました。現在ではJAS認定の製材工場が多く、品質のばらつきが少ない良い材が出荷されています。
また、土佐スギですが、こちらもヒノキ同様にブランド化を目指しています。性能(強度、含水率)を表示し、原木段階から住宅現場まで産地証明書が引き継いでいくトレーサビリティーに取り組ん
でいるとのこと。
流通センター、製材・加工所、森林組合などどこを見学しても、材料の品質には絶対の自信があるとの思いを感じました。
このヒノキ、スギ材が他地域産木材と比較して、同じか安く手に入るのだったら、設計者として興味深く、一度は使ってみたくなります。

少し前まで、国産材というと高いというイメージがありました。
輸入材に押されて、ますますその傾向は強かったのですが、最近は原木自体が安値になり、産地の方には気の毒なほどです。高知県産材も同様でこれでは林業が衰退し、森林は荒れる一方です。森林が荒れれば川も汚れていきます。これまで清流と謳われた四万十川や仁淀川などの影響も心配されるところです。森林を守ることは多くの自然環境と人々の暮らしを守ることになります。
我々にできることは僅かかもしれませんが、少しでも役立てば嬉しいかぎりです。

土佐材

土佐材

最後に木造住宅を計画中の建築主の皆さんにこのツアーのお知らせ。
「土佐材見学ツアー」という高知県からの提案で、旅費の一部を助成すというものです。

現地にご家族で出掛け、伐採地に直に入り、ご自分たちの家で実際に使われる木を確認し、それを伐採見学しするものです。一緒に製材、加工所や木材センターを見学。古民家で郷土料理を食べ、自然を体験し、土佐の文化に触れるツアーです。
建築主家族にとって、完成する木の家に一層の愛着を持つこととなるはずです。
是非一考ください。


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仮設住宅を知っていますか
昨年は仮設住宅についていろいろと勉強する機会がありました。

震災2か月後には建材メーカーから直に設計の相談を受けたこともありましたが、これは依頼者のビジネス要素が強くて、お断りしました。
その後、UIA(世界建築家会議)に参加する上で、「UIA住宅会議」のWGメンバーとして末席で係り、その中で「仮設住宅」も取り上げることになり、私が展示パネルをまとめることになりました。

この度、その経験からJIA(日本建築家協会)関東甲信越支部会報誌Bulletin上でコラムを執筆しました。
掲載ページをPDFにてWebsiteにUPしてあります。


Bulletin vol.234(2012年3月号)特別コラム

意外と知らないことを簡潔にまとめてあります。
是非一読いただければ幸いです。



仮設住宅
プレハブ協会による仮設住宅(宮城県名取市)

仮設住宅
木造の戸建て仮設住宅(岩手県住田町)

写真撮影:鈴木利美(ダンス建築研究所)さん




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