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建築家・飯沼竹一のブログです。暮らしや住まい、家や建築、街などを通して見聞きしたこと、日々感じたこと、考えたことなどを気儘に手記にしています。四方山話も含めて呑気に続けて行こうと思います。 ご意見ご感想などお願いします。
三信ビルの最後に…


昨日、閉鎖間際の三信ビルに漸く行くことができた。
午前中の打合わせが突然延期になり、時間を作ることができたので、プレゼン材料の買い足しの口実も作り、急遽日比谷まで車で出掛けた。

三信ビルには11時半頃着き、ちょっと早いが唯一テナントして残っていたニューワールドサービルで昼飯を食べるためにアーケードに入る。
思った以上に多くのお客が早くから詰めかけ、店内は満席で10人くらいが店の前で列んでいる。ここまで来て時間を気にしても仕方ないので、57年の歴史を味わいながらランチを食べるために列ぶことにした。
しばらくして、友人Fさんから携帯にメールが入り、外回り中で昼飯ついでに三信ビルに行くとの知らせ…久しぶりの再開が三信ビルで一緒に昼食という偶然に驚いたと同時に、ここにも物好きがいたと嬉しくも感じた。(笑)

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三信ビルは、日比谷公園側から仮設シートが順次掛けられ、いよいよその時が間近であることを否応なく意識させる。

私は、日比谷通りのスカイラインが学生の頃から好きだった。
通り沿いに水平のラインが綺麗に揃っていて、反対側は皇居であり、日比谷公園で、その対比を美しく感じた。これが日本の中心の都市景観だと誇らしくもあった。
しかし、今となっては、この水平ラインを大きく突き抜けて超高層ビルがどんどん増殖し、美しいスカイラインは消滅したと言っていい状況である。
経済的な事情は重々理解できるが、何とも遣り切れないない気持ちである。 そして、今回の三井住友銀行本店と三信ビルの再開発である。日比谷も有楽町も銀座もものすごい早さで街並みを変えていく…。丸の内は様変わりしてしまった…。

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今となっては、三信ビルの保存再生は、所有者である三井不動産の英断を祈るしかない状況に変わりない。
三井住友銀行本店と三信ビルの総合的な再開発が主目的で、それを達成するための緩和条件として外観の一部などを保存する…そんな中途半端な手法を使うことだけはやめてもらいたい。

この三信ビルの他にはない独特な雰囲気を持った素晴らしいアーケードを残すことができなければ意味がない。
78年の歴史を人々の胸に刻み込み、潔く解体してしまうのも日本的かもしれない。
…見頃になった桜を合わせながらそんなことを想った。

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耐震診断のすすめ



昨日、能登半島で大きな地震が起きた。
石川県輪島市などで震度6強と大きく揺れた模様で、被害も死者1名、重軽傷者196名。建物は全壊55棟、半壊が139棟と発表されている。
迅速で暖かな支援と早期の復旧を願う。

私が学生時代、関西や九州出身の友人達は、震度2や3くらいの地震で、非常に怖がっていたことを思い出す。なぜなら、関西や山陰、九州地方は地震が少なく、揺れを体験した経験が少ないからである。
しかし、阪神淡路大地震をはじめ、00年の鳥取県西部地震や、04年の新潟県中越地震、05年の福岡県西方沖地震。そして昨日の能登半島の地震…今まであまり大きな地震発生を聞いたことない地域で起きている。
文部科学省の地震調査研究推進本部(http://www.jishin.go.jp/main/)が公開してる「地震動予測図」では、この地域での30年以内に震度6弱以上の地震が起こる確立を、0.1%未満としていた。
これらのことから、日本はまさに地震国であり、どこに住んでいたとしても地震の被害から避けられないものだと、改めて認識させられる。

さて、先日のブログでも、古い木造住宅の耐震改造の必要性を書いた。
昨日の地震の報道でも、木造住宅の全壊した様子を映し出している。揺れの激しさがひしひしと伝わり、そこで生活していたであろう人々を思うと、あまりの無惨さに言葉も出ない。
全国の木造住宅の4戸に1戸は、耐震強度が不足していると思われる。 この際である、是非とも一度、早い内に耐震性に問題有る無しをチェックすることをお勧めする。
戸建て木造住宅の場合は、インターネット上でも一般の方が簡単にできる簡易耐震診断があるので、これを利用すると良い。もちろん多くの市町村ではこれと同様のパンフレットを配布していて、誰でも簡単にできるはずだ。

 「誰でもできるわが家の耐震診断」
(財団法人日本建築防災協会) http://www.kenchiku-bosai.or.jp/wagayare/taisin_flash.html

この簡易診断の結果、再度専門家の診断が必要との判定がでた場合は、市町村の相談窓口や建築士会、設計事務所などに相談することをお勧めする。
その際、くれぐれも悪徳なリフォーム業者などに、つけ込まれないよう十分注意してほしい。

とにかく、地震は何時何処で発生するか分からない。地震予知の進歩は望むところであるが、現状ではまだまだ難しい。
自宅が地震で倒壊しても、その責任は全て所有者本人になる。そして、自分や家族の身を守るのは、結局は自分自身である。 それだけに地震にも日頃から備えて欲しいと願う。
最近癒されるもの…


私を癒してくれるものが二つある。

一つは、一年前に事務所を法人化にした際のお祝いに友人が送ってくれたミニ胡蝶蘭。
この胡蝶蘭は、昨年送ってもらってから1ヶ月ほどで花が落ちてしまった。
何度か経験したがその後、葉と茎だけが残り事務所の窓際で忘れられた存在だったのだが、今月に入り花が咲いたのだ!初めての経験だったので大げさであるが感動した。そしてとっても嬉しくてこのブログでも紹介したくなったのである。

 もう一つは、「i fish」というマイコンおもちゃ。
昨年の長女へのクリスマスプレゼントである。 彼女もとても気にいっているのだが、私も負けずとこの愛嬌のあるイルカ(?)に気持ちが和むのである。
音や振動に反応し、おでこや尻尾を触っても、尾を振ったり、クルクル回ったりして「ポコッ
ポコッポコッ…」ていう音と発光で喜怒を表す。夜中に一人で見ていて飽きないのだ…(苦笑)


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大地震に不安な建物の進まない耐震改修…



前々回のブログで「欠陥住宅はなぜ無くならないのか」 と題して欠陥住宅の具体例などを書いた。特別に不安を煽ったわけではないのだけども(…苦笑)、読者の方から不安である旨のコメントや相談をメールでいただいた。
内容は木造戸建て住宅の耐震性に疑問を持っている方たちで、具体的には3名の方に、誰にでもできる簡易耐震診断を紹介した。

結果、3名の方の住宅ともに、問題無しであったようで、私としてもホッとした次第である。(笑) なお、この3名の方の住宅は1981年(昭和56年)5月以降に建てられた住宅であった。

この診断方法は、インターネットでできる「誰でもできるわが家の耐震診断」という簡易診断である。
財団法人日本建築防災協会という公益法人のサイト上でサービスしている。戸建て木造住宅に住まいの方は是非一度、ご自身で診断することをお勧めする。http://www.kenchiku-bosai.or.jp/wagayare/taisin_flash.html


それにしても、問題となる1981年5月以前に建てられた旧基準の住宅の耐震改修の実施済み戸数が伸びていない。

現行の耐震基準に不適合で耐震補強が必要とされる住宅は1,400万戸もあり、その大半が木造住宅だとされている。早い話が1,000万戸近い木造住宅が大地震が起きたときに倒壊などの大きな被害を受けると危険視されているのだ。

ちなみにマンションおいても同様で、耐震改修工事を済ませたものは、まだまだ少数である。
一昨年の暮れに耐震強度偽装事件が大問題になったが、これらの旧基準の建築物は、構造計算の偽装はなくても、現行の耐震基準を満たしていないのである。 本来であれば国交省がもっと危険なことを周知し、少なくとも耐震診断を行うことを義務づけるべきである。でなければ例の耐震強度偽装事件で強度不足のマンションやホテルを使用禁止にし、建て直しを命じた措置は二重基準になってしまう。
まぁ、この問題は別の機会に取り上げるとして、話を戻す…。

阪神大震災を契機に、1995年(平成7年)12月25日に施行された、「建築物の耐震改修の促進に関する法律(耐震改修促進法)」では、1981年5月以前に建てられた現在の新耐震基準を満たさない建築物について積極的に耐震診断や改修を進めることが求められている。この法律により各自治体などで耐震診断の助成や、住宅公庫などによる改修費の融資額拡大など、いろいろな施策を進めてきたのだが、現状はなかなか進んでいない。

2004年10月の新潟県中越地震では、その被害の大きさ、多さなどから、我々に耐震改修の必要性をまざまざと見せつけた。
しかし多くの人の関心はあっという間に無くなったようで、千葉市の建築指導課によれば、この地震直後からしばらくは、住宅の耐震診断の問い合わせが一時的に増えたそうだが、半年ほどで元の低調な数に戻ったという状況を聞いた。おそらくこれは千葉市に限ったことだけではあるまい。

一建築家からみると、ごく一般的な古いビルや木造住宅は、大地震にはとても耐えられそうにないものが街中に多数あることが心配である。ビルの屋上の高架水槽や袖看板なども多くのものが問題を持っている。2005年におきた福岡県西方沖地震では、ビルの窓ガラスが割れて落下したり、住宅街のブロック塀など強度不足のものが破壊された。幸いにも休日早朝の発生だったためか人的被害は無かったようだが…

このような状況下、私は考える。
1981年5月以前に建てられた建築物の耐震診断を義務づけて、それを報告する。そして、補強が必要な建築物については、早急に耐震補強などの対策をするよう勧告し、資金等をサポ-トする。このような施策が必要なのではないか…。地震発生後の被災者や被災建物の対策についても対応が急がれるが、まずは予防が大切である。

兵庫県南部地震(阪神大震災)、新潟県中越地震、福岡県西方沖地震…地震はどこにでも起こるもので、この日本に住んでいる以上さけられないものだと痛感する。
そして、何時おこるか分からないのも地震である。
こと関東大地震や東海大地震は、誰にとっても人ごとではないはずだ。
「備えあれば、憂いなし…」。みなさんも人任せにせず、住まいや日頃利用する建物や施設について考えてみていただきたい。
自分や家族の身を守れるのは、結局は自分自身なのだから。